善法寺保育園
築60年を超える鉄骨造平屋建て保育所の改修プロジェクトである。
建物は長い年月を経て内装の老朽化が進んでいたものの、耐震性能には問題がなく、構造体の価値を活かしながら改修する計画とした。この園舎は、保育室が南側の園庭に面し、その距離が非常に近いことが魅力であった。この環境の良さを維持しつつ、現代の保育に求められる機能性と新たな魅力を加えることを目指した。
改修において注目したのが、東側に隣接する公園である。既存の建物にはこの方向に窓がなく、公園の緑を内部空間に取り込むことができていなかった。そこで東側に新たに窓を設け、その外にはウッドデッキを配置。乳児室を公園側に配置することで、公園を借景とした穏やかな空間を実現した。窓から見える緑と、ウッドデッキを介して感じる外部とのつながりが、乳児たちに心地よい環境を提供している。
室内空間は、既存の保育室を区切る壁を撤去し、廊下の無いワンルームへと更新した。これにより、園内の多様な活動を柔軟に受け入れることが可能な広がりのある空間となった。さらに保育室の南側にはウッドデッキを縁側として再整備し、室内と園庭の境界を曖昧にし、子どもたちが自然と積極的に関わることができる計画とした。
インテリアにおいては、玄関からのアイストップとなる部分を意識的にデザイン。家形の天井を設けることで空間に特徴を与え、子供達の記憶に残る居場所の構築を目指した。そこから続く壁には黄色を採用し明るく印象的な空間を演出した。外観には園のテーマカラーであるオレンジをエントランス部分にアクセントとして配色。爽やかさと親しみやすさを表現している。
完成後の園舎は、従来の魅力を引き継ぎつつ、新たな価値を加えた空間となった。この場所で育つ子どもたちが自然と親しみ、豊かな時間を過ごすことを期待している。
用途 : 保育所
規模 : 鉄骨造1階建
場所 : 兵庫県尼崎市
延床面積 : 330㎡
竣工 : 2024年3月
写真 : 貝出 翔太郎